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ウシガエル

かつて食用として日本に大量に輸入されたウシガエル。その悲しい過去の歴史のためかウシガエルは人間に対して警戒心が強く、なかなか人を近づけない。ところが今日池のほとりで出会ったウシガエルは周りでザリガニとりをしている子供たちの喧騒にも、ジジィカメラマンたちのくりかえしの多い会話にも、まったく動じることなく信楽焼のように固まっていた。かなり歳とっているのだろう、目はうつろで瞬きもせず、認知症かとも思わせる態であった。
そのむかし、藤沢にある工場に勤めていたころ、駅の近くにカエルの串焼きを食べさせる小さな居酒屋があり、よく会社の先輩に連れられていった。カエルを注文するとマスターがバケツの中で跳ねるウシガエルを鷲づかみにしてまな板の上に置き、軽快な包丁さばきで料理する。カワをむき内臓を取り出すと赤い心臓がまな板の上でピクピク動いていた。先輩に「心臓好きか?」と聞かれ咄嗟に答えられないでいると、先輩は「これがうまいんだよ」といって動いている心臓を指でつまんで普通に食べた。 「何でも有り」のいい時代だった。
池のほとりで動かなくなったこのウシガエルも、何か若き日のいい思い出にひたっているように見えた。

2016/5/1 9:05 Nikon 1 V3, 1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6, f7.1 1/200 ISO160

 
   
ウシガエル
Nikon 1 V3