連日の雨で本当に体にカビが生えてきた。外が少し明るくなってきた。そろそろお天道様を拝めるかな。雨はやんでる。障子のように明るくなった空に誘われて外に出た。が、行きは良い良い帰りは怖い。はじめちょろちょろ、のち本格的雨。こういうとき僕は傘もカッパも持っていない。晴れを祈って家を出るのに雨具を携帯するのは、末期がん患者の見舞いに、香典を用意して行くようなものだ。暗くなり始めた空の下、とりあえず雨宿りのために茅葺の古民家に入った。中は、しのび会う恋をつつむような白い煙がたちこめ、人影はない。上がり框には怪しげな秋の木の実と野菜。そうか、こいつは、いつかふらふらと立ち寄った、あのキツネの居酒屋にちがいない。煙でシバシバする目をかっと開き、雨中に飛び出して家路を急いだ。
2016/9/23 11:54 SONY DSC-RX100M3 f2.2 1/25 ISO1600