ドジョウはふだん田んぼの水底にじっとして動かない。色も泥と区別がつかないからどこにいるのかわからない。ところが人が近づくと足音に跳ね起きて土を巻き上げて泥の中にもぐり込む。だから畦道を歩いていると、歩調に合わせて、水中のあちらこちらで小さい土煙が上がり、水輪がいくつもできる。ところが、きょうのドジョウは土の中にもぐるそぶりは見せず、狂ったように身体をくねらせてベリーダンスを踊った。水面に上がって来ると、10本の髭をたくわえた口を動かして何かを叫んだ。すると近くで踊っていた一匹が寄って来てデュエットになった。この日はオタマジャクシもゲンゴロウもアメンボもみんな踊っていた。
この写真に似合うドジョウを詠んだ俳句を探してみたら、泥鰌鍋の句ばかりが出てきた。
運ぶ間に湯気うしなへり泥鰌鍋 鷹羽狩行
おのづから口伝となりぬ泥鰌鍋 藤田湘子
泥鰌鍋牛蒡ばかりが減りもして 稲畑廣太郎
俳人は皆食いしん坊だった。泥鰌鍋は夏の季語。
24/4/23 10:22 OM SYSTEM OM-1, M.ZUIKO ED 300mm F4 IS PRO with MC-14, f5.6 1/2000 IS03200