台風10号は九州をゆっくりと北上している。大谷は42号を打った。薄曇りで日差しは弱く、今朝の気温は昨日より2℃ほど低い。セミの声に混じって、頭上からかすかにチンチンチンが聞こえて来た。音源を探していたら目の前の幹に突然現れたオスのカネタタキ(鉦叩)。それでもまだ上の方からチンチンチンが聞こえるからこれは別の個体だ。からだのわりに腹巻ほどしかない翅は飛ぶためのものではなく、楽器である。艶のある翅の表面は見る角度によって色が変わった。体長は1センチ。こんな小さな身体と矮小化した翅で、どうしてあんな綺麗なチンチンチンを奏でることができるのだろう。すぐ近くに翅の無いメスのカネタタキがうろうろしていた。
このチンチンチンはメスだけでなく人の心にも響くのか、鉦叩を使った名句が多い。
鉦叩昼を淋しくすることも 稲畑汀子
長かりし夏のつづきの鉦たたき 山口誓子
そしてこれを執筆している今、部屋のどこかでカネタタキが鳴いている。もう11時半、そろそろ寝るとしよう。鉦叩鳴けばいつしか夢の中。
上の写真データ:24/8/29 7:48 OLYMPUS TG-6, 18mm f4.9 1/100 ISO320 w/Flash