ここのモズはよく人に馴れている。
寒い朝もハンティングに余念がないオスのモズ。その驚異的な視力は落ち葉の下にうごめく小さな生き物も見逃さない。高い枝から急降下して地上に降り、枯れ葉を掻きわけると見事ミミズをゲットした。そこまではよく見る光景で、問題はその後だ。ミミズを嘴にぶら下げたまま桜の木の枝に飛び移り、さらに小枝を伝って、細く尖った枝を見つけると、そこにミミズを刺したのである。時間をかけて念入りに、何度かやり直してしっかりと刺していた。そして絵を描き終えた画家のように、満足そうにその出来栄えを眺めると、飛び去ってしまった。噂には聞いていたが、これがモズのはやにえ(早贄)か、と思った。
はやにえの目的については諸説あるが、本当のところは誰にもわからない。人間が思いつくような、そんな簡単な理由ではないと思う。
秋の季語「鵙(もず)の贄」は俳句にもよく詠まれている。
枯れ枯れて素性の失せし鵙の贄 稲畑汀子
鵙の贄人間これに頷きぬ 藤田湘子
上の写真データ:25/2/4 8:57 OM SYSTEM OM-1, M.ZUIKO ED 300mm F5.6 IS PRO with MC-14, f9 1/500 IS0200 -0.3EV